附属端艇部通信第8号

ヘッドコーチの鈴木です。今回は4月17日に行われました学習院戦についてのレポートをお伝えします。

まず対校ダブルスカルですが、現主将(近藤)と新主将(浅野)のペアということで長く漕いできたこのクルーは、常日頃から、バウの先輩である近藤がストロークを叱咤しつづけ、それに浅野がしっかりと答えるという高いモチベーションを維持して練習を重ねてきました。新主将となることが決まったストロークの浅野は、ここ最近はさらに部に対して責任感を持つようになり、新たに入ってくる新入生の見本となることができる漕ぎを目指し、練習にも今まで以上に積極的に取り組むようになりました。しかし、試合5日前に腹痛を訴え、医者に見てもらう事態が起こってしまいました。検査の結果、幸い大丈夫とのことで練習を再開したのですが、もう試合は明後日に迫っていました。

だがここで中途半端な漕ぎはできない、その思いが、残り二日で彼らに最後のひと伸びを与えたのだと思います。当日はその成果が実り、序盤から相手を突き放し、大差で勝利をあげることができました。浅野は、この数ヶ月間、近藤から言葉だけでは決して伝えられない多くのことを学んだと思います。それを是非、今回早くも院戦を見にきてくれたたくさんの新入生に伝えていってほしいというのが我々の願いです。

次に対校クォドルプルの報告をお伝えします。思えば関東選抜が終わり、シートレースを経て、一年生(現二年波留)を院戦対校クォドルプルに乗せると決めたその日から実に様々な事がありました。

最初のほうは以前のような安定感が出せずにいて苦しんだり、蹴っても蹴っても合わないような状態が続きました。しかしそれでも選手たちは合う日を信じて漕ぎ続けてきました。そんな漕ぎこみを繰り返すうちに、いつしか二年生は三年生のよい漕ぎを自然と吸収していくようになりました。最初は空回りしがちであった、去年の借りをなんとしても返したいという三年生の思い、なんとしても先輩についていかなくてはという後輩の思いも、合宿あたりから艇を進めるという一つの目標として共有できるようになってきたという実感がありました。

そうして春爛漫、お花見レガッタを迎えました。一日目の非常におだやかなコンディションでは一位とほとんど差のないタイムを叩き出し、一応の成果が形となって表れた反面、三位入賞に絡めたとはいえ二日目の、風が彼方此方から吹いてくるようなコンディションにはまだまだ対応しきれていないという課題も見えてきました。これは皆が忙しい中で練習日程を組んでいることでどうしても練習が午前の早い時間に集中してしまい、あまりラフコンディションを経験できなかったことにも原因があったと思います。

そんなお花見も終わって院戦まで残り一週間となり、クルーとして目指したのが、どんなコンディションでも自分たちの感覚を信じ一貫して蹴れるようになることでした。最初はとまどっていた二年生も、三年生の漕ぎから波の対処を学び、前日には自ら「何かをつかんだ」と言うほどに成長しました。お花見レガッタでの学習院との差は1秒足らず。しかし、自分たちが納得いくまで漕ぎつづけた結果、迷いはなくなりました。

そして迎えた院戦当日。運命の皮肉か、戸田では珍しく午前中から非常に風が強いコンディションでした。午後になっても風はおさまるどころかむしろ強くなり、タフな漕ぎが要求されました。「どんなコンディションであろうと、今までに漕いできた量と、オールを介して伝わる水の感覚だけは絶対に嘘をつかない」と選手を送り出しました。もう選手を信じるのみです。

スタートの時間が近づき、そのとてつもない逆流は最高潮に達していました。旗が下りてスタートした直後に、最初から飛ばしていくとの言葉どおり学習院が高めのレートで先手をとって附属は後手を踏むことになりました。しかし、その展開はある程度ミーティングで想定していたので、焦ることなくじっくり一本を押すことに専念し、半艇身から逆カンバス程度の差で喰らいついていきました。ただ、高いレートで飛ばす学習院のリズムも非常によく、風にも負けずに非常に力強い一本を押していたため、なかなか差が詰まらないまま前半500mを通過しました。

ここでクルーが、特にコックスがよく我慢したと思います。その我慢が後半、一本一本徐々に差を詰めていく原動力になりました。コックス林の足蹴りに応えて艇がさらに伸び始め、残り250m付近でついに相手をとらえたのです。しかし学習院もそこからさらに一伸びし、すばらしい勝負根性を見せました。まさに対校戦にふさわしい意地と意地とのぶつかり合いでしたが、残り150mでついに附属がかわし、勝利に至ることになりました。

コーチとしては、勿論クルーを信じていたものの正直途中までは気が気でありませんでしたが、客観的に見れば対校戦として実に見ごたえのあるいいレースだったと思います。学習院クルーより、「来年は絶対に勝つからな」という言葉がありましたが、あちらも附属戦をそれほどまでに大事な一戦と見てくれていることをうれしく感じるとともに、両校選手ともに全力を出し切る伝統のレースがこれからも続いていってくれることを願います。

最後に裏方として運営してくださったOB・OGの皆様に誠に感謝申し上げます。皆様のおかげでクルーのことだけを考えてやってくることができました。私のコーチ任期も残すところあと一戦となりましたが、今回の院戦における対校クルー決定の判断が、浅野・波留という次代を担う二人を本当に自信を持って送り出せるほどに成長させることができたという自負の下、来週は関東選抜以来となるオール三年生クルーで臨みます。院戦が次代への「伝授」であるなら、開成レースはそれぞれの「巣立ち」です。三年生クォドルプルは二年間の頑張りの粋を披露して有終の美を飾れるよう、また二年生ダブルスカルは附属新体制も充分やっていけることをお見せできるよう最後の一週間をさらに気を引き締めて臨む所存です。どうぞご声援をお願いします。

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