附属端艇部通信第9号

ヘッドコーチの鈴木啓介です。今回はとうとう開成レースのご報告をする号となり、やり終えた充実感とともにこれで引退を迎えるということにまだ実感が沸かないというのが正直な所です。春風漂う晴天の中、今年の開成レースももたくさんの新入生、ご父兄、先生方、そしてOB・OGの皆様方の温かいご声援を頂き盛況のうちに終えることができました。

まず浦和第一女子高校との一戦(所謂一女戦)ですが、風は時たま吹くものの流れのほとんどない絶好のコンディションでのレースとなりました。今回の一女シングルスカルクルーは中西とお花見でほとんど同タイムということで接線が予想されましたが、スタートから飛び出した附属・中西はそのまま波に乗って相手を突き放し、大差をつけてゴールすることができました。

思えば一女戦勝利は107回以来、女子部復活後は初ということで誠に価値ある一勝であったと思います。中西はたった一人の女子部員として本当に辛いことが様々あったはずですが、次の年後輩と共に漕ぐ日の来ることを信じ、この1年目標をしっかりともってやってこれたことは特筆すべきことだと思います。コーチの石田もこの1年間決して焦ることなくじっくり取り組んできましたが、このことが節目の大舞台で見事実を結んだのでしょう。女子部は新入部員も既に数人決定しておりますのでまた女子クォドルプルが関東で大暴れしてくれることを願いたいと思います。

次に2年生ダブルスカルです。こちらは冬からそれぞれが上級生とともに漕いで来た成果が院戦後にしっかりと見られ、習得した技術を相互に交流させつつかなり高いモチベーションで一週間を過ごすことができました。そして迎えた当日、招待の早大学院ダブルとのレースになりました。スタートから一進一退、非常に見応えのある展開になりました。拮抗状態が続く序盤を過ぎ、中盤では足蹴りから艇を伸ばし少しリードすることができましたが、後半に追いつかれてしまい最後は半艇身のビハインドでゴールしました。

結果は残念ではありましたが、この時期の二年生同士のペアと言うことで考えると(考えなくてもですが)3分42秒というタイムはかなりの好タイムであり、実に今後の期待が持てるレースをしてくれたと思います。二人と人数にしては少ないながら、彼らなら新しい新入生を十分にひっぱっていってくれると確信しております。長くこの二人を指導してきたコーチの佐々木共々自信を持って新ヘッドのもとに送り出したいと思います。

最後にクォドルプルです。試合では関東選抜以来となる114回生クルーで臨む最後の引退レースです。半年ぶりの最強クルー、その勇姿を皆様の前で披露できるように冬場から院戦クルーと同時並行で練習を積んできました。下級生が目覚しい成長を遂げる中で、上級生はさらに深いところで漕ぎを進化させていくことができました。重視したのは水との関係です。理屈ではなく水を感じることに集中する中で、艇を進めるということにおいてどれだけ効率よく漕ぐことができるのかということを常に問いかけてやってきたつもりです。レース直前には後ろ全員が目をつぶっても完璧に揃うようになりました。後はそれを開放するのみです。

ついに迎えた対校レースは前2レース同様、最高のコンディションでのレースとなりました。スタートからシンクロ、押し、共に申し分無く、どの一本にも最後の気迫がみなぎる漕ぎをすることができました。相手を徐々に突き放し、後半独走に入っても自分達の漕ぎを追及しつづけたままゴールに飛びこみました。それは今年77回に及ぶ開成・附属定期戦史上初めて附属が王手をかけた瞬間でした。終わってみれば自身が2002年に出した附属レコードを更新する会心の漕ぎでした。レコード更新はコーチ時代の目標の一つであったので最後に達成できたことを本当にうれしく思います。

伝統の一戦・開成レース。あとに残るのは勝った、負けたの結果のみ。ですがその一つ一つに本当に心揺さぶられるドラマがあるのだと心底わかったような気がします。今回そのかけがえのない一つに密接に関われたことを感謝するとともに、「女子部、男子部の将来における新たな可能性を示すこと」と「有終の美を飾ること」の両方を満足のいく水準で達成できたことを選手個々の努力という面から改めて評価したいと思います。おそらく次号(第10号)が私の書く最後の端艇部通信になると思いますが、ヘッドに就いてからこれまでの1年間を振り返りつつ端艇部に最後の足跡を残そうと思っております。

最後になりますが、いつもながら戸田に足を運んで頂いてお声をかけてくださる諸先輩方には本当に感謝の気持ちで一杯です。皆様に見守られていることがいつも選手、そして我々コーチ陣及びスタッフ一同の支えとなっております。附属の良さを心から感じられる開成レースが永遠に続くことを祈って今回は筆を置かせていただきます。どうもありがとうございました。

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