附属端艇部通信第16号

現場スタッフから

114回 近藤 清太郎

ヘッドコーチに就任いたしました114回の近藤清太郎です。現役時代にはこの役目につくことを予想していなかった、といえば嘘になりますが、いざ総勢18人の選手を率いる立場になったいま、改めて責任の重さを感じるとともに今後の附属端艇部の可能性に大きな期待を抱いているところでもあります。

これからの方針を掲げる前にここまでの一年について若干述べましょう。受験のために戸田を離れていた私にとって、この一年は桐漕倶楽部の温かい雰囲気を再び思い出させるものでした。学校を離れて活動するという特権的な自由の要素とローイングという限りなくストイックな要素の中で、現役・OBを含めた豊かな人間関係が作り出す和気あいあいとした雰囲気は、紛れもなく自分が現役時代に享受していたものであり、また今からちょうど4年前に試乗会に来た私に入部を決意させたものでした。もちろんこの雰囲気が維持されてきたのも陽気な西村さん、畑中さん、そして愉快に、精一杯頑張った116回の選手たちに負うところが大きく、その点で今は引退してしまった彼らへの感謝はとても一言では言い表せません。ともかくも、私にとってこの一年は長い時間をかけて初心を取り戻した過程であったのでした。そしてさらに、このような確信を築く過程でもありました。すなわち、何よりも附属端艇部のこの雰囲気というものこそが守っていくべき宝であるということです。開成に勝ち越すという長年の夢がついに実現し、これまであまりに大きかった至上命題の裏に隠れていた端艇部の本質が見えてきたということかもしれません。一年生は新たに11人も入りました。彼らとともに今年も和気あいあいとボート、そして桐漕倶楽部というものを楽しんでいきたいと考えています。

しかしながら強い倶楽部というものは楽しい倶楽部であることの前提条件でしょう。私たちはまだまだ開成に勝ち続けなければなりません。

今年度のトレーニングの指標は体力面の強化です。東京都内では早稲田学院、また関東地区で見て小見川や潮来の選手と見比べて附属の選手はどうしても線が細い。この要素が附属の全国大会進出を阻んでいるともいえます。バランスのよい新艇が入ったことを考えても、体力と技術の比重を例年よりも体力寄りにする余裕はあると考えます。また、漕ぎすぎによる故障を減らすため、メニューにおいてランの要素を増やすことも考えています。これまでより厳しい練習になると予想しますが、117回の
選手はやり通せると信じています。

当面はインターハイ、国体出場を目標にし、現在シートレースを行なっているところです。正直なところ、予選通過にはかなりの困難が待ち受けていると思われますが、クルー・コーチともども全力でチャレンジする所存なので6月16・17日のレースには応援にぜひいらっしゃってください。

114回 林 裕真

昨年度に引き続いてコーチを務めさせていただきます林です。昨年度はシングルスカルのINTREPIDとダブルスカルのDISCOVERYのコーチを担当しました。

INTREPIDの小田は部でただ一人シングルスカルに乗るということになりました。自分の漕ぎがダイレクトに艇速やバランスに伝わる環境下での漕艇技術の上達を期待しての配置でした。最初は沈の恐怖に怯えながらおっかなびっくりの漕ぎでしたが、低レートからじっくりと漕ぎこむことによって艇さばきやオールさばきも上手になり、艇速も出せるようになって来ました。レースごとにぐんぐんと成長を果たし、敗れはしたものの、開成レースの招待戦では立派な漕ぎを見せることができました。

DISCOVERYは新艇ということもあり、ダブルの対校という位置づけで、166、117回から1名ずつを出し、タイムを狙うと共に同じ艇に乗ることでしか伝えられない細かな技術や漕艇に対する情熱の伝達を期待してのことでした。この艇は最初から2人の息がぴったりと合い、すばらしい伸びを見せてくれました。対校、ジュニアのクオドルプルに匹敵する艇速を発揮したこのクルーは、彼らに「蹴らなければダブルに負けてしまう」という雰囲気を生み出し、部全体の士気の向上にも繋がりました。

今年度は多くの118回生を迎え、附属ボート部はさらに大きな集団へと生まれ変わりました。主戦力となる117回生には、それぞれ別の艇で、冬から春にかけて上級生から受け継いだ、あるいは厳しい練習の中で身に付けた技術を全員で共有しあい、さらなる技術の向上を目指していきたいと考えています。また、近年技術一辺倒でおろそかにされがちだった体力、筋力面の向上を目指してのトレー
ニングも強化していきたいと思います。

過去稀に見る人数に膨れ上がったボート部ですが、117回生を中心としてインターハイ、国体といった全国大会を目指すと共に、前途有望な118回生たちの技術面、体力面の向上も早期に行ってボート部全体の総合力を上げていければと考えています。来るべき附属ボート部の黄金時代の黎明期を、ヘッドコーチの近藤と共に支えていきたいと思います。

昨年度スタッフより

113回 西村 健

昨年度、ヘッドコーチを務めておりました113回生の西村です。対校クルーは、結果として学習院戦で敗北し、開成戦で勝利しました。この結果が全てではあると思いますが、合宿を終えてからの対校クルーの活動を報告したいと思います。

合宿において体力面でかなり追い込んでいたので、練習の強度を少し落とし、自分達の弱点の改善に努めていきました。短い練習時間でいかに集中してモーションに取り組むか、春の対校戦シーズンにおいて大変重要な問題です。色々と悪いところはあったのですが、特に「クルーの統一感の無さ」には最後まで頭を悩まされました。私自身は現役の時、ほとんどをストロークとして漕いできたため、かなりの量を漕いできた朱龍クルーが何故合わないのかが不思議でなりませんでした。クルー全員の合わせようとする意思が足りなかったとしか言えません。

そのような状況でお花見レガッタを迎えました。久しぶりの東京勢との対決でしたが、決勝で学習院、早大学院に負け、改めて自分達の出来の悪さを痛感するレースとなりました。この時点で学習院とのタイム差は5秒であり、翌週の学習院戦でこの現実が覆ることも無く、去年に引き続き院戦敗退となりました。

翌週にひかえたのは附属端艇部における最大の試合、開成戦です。相手の開成の実力が皆目見当がつかず、現状が現状なだけにこの1週間が不安で仕方ありませんでした。更に練習をしても内容は芳しくなく、タイムもいまいちではどうしようもありません。しかし、朱龍クルーが遂に目覚める時が来ました。開成戦の直前での練習において、クルー結成後初めて全員の動きが合ったのです。

残念ながら最後までレースで上手くスタートを決められませんでしたが、その後の艇の伸びはよく前半の優位を保ち続けた朱龍がわずかに先行してゴールし、歴史的な勝利をもぎ取ることができました。

去年の春ヘッドコーチの重役を仰せつかった私でしたが、周りの方々は口をそろえて「今年は特に周りからのプレッシャーがあって大変だよ」とおっしゃいました。そう言われること自体プレッシャーを感じずにはいられませんが、1年間の活動を通して私から言えることは、今年は決して特別な年ではないということです。どの代においても、現場に携わる人は、毎回のモーションに奮闘し、頭を悩ませ、試合の勝敗に一喜一憂しています。毎年が勝負の年であることを認識し、勝ち越した時こそ、更に勝利への飽くなき意思を忘れてはいけません。この1年を糧とし、更なる躍進を次世代に期待したいと思います。

最後になりましたが、端艇部に関わってきた足掛け4年間、お世話になった皆々様には感謝しております。特に、今年度は101回の菅原さんには新艇に関して、109回の石塚さんにはHPの運営について大変お世話になりました。この場を借りてお二方にはお礼を申し上げます。

113回 畑中 正明

女子コーチを担当させていただいていた113回の畑中です。このたび2年間の任期を終え、今回の開成レース・浦和一女戦をもって引退となりましたが、現役選手と共にまたボートに関わることができて本当に幸せな時間を過ごせたと思います。

女子クルーは技術面に関しては116回でトップレベルの実力を持っていました。ストロークのドクターストップにより、2年間でダブルを高みへのぼらせるという夢は叶いませんでしたが、最後の引退試合を3人で迎えることができて本当に良かったです。

コーチとして僕が現役選手にしてあげられること。それは自分が教わったこと、自分が経験から得たことを下の代に伝えるということだけでした。だから、ボートを漕ぐ技術、トレーニングや運動に対する知識、そしてボート部という集団の中から教わる人間性。それらが少しでも現役選手に経験という形で受け継がれていれば、それはコーチを務めた者として本当に嬉しく思います。

これから新入部員、新コーチも加わり附属端艇部に新たな歴史の1ページが加わるでしょう。コーチとして引退はしたけれど、附属端艇部のOBとして全力でサポートしていきたいと思います。本当にありがとうございました。

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