附属端艇部通信第7号
ヘッドコーチの鈴木です。今回は春のレースを前に附属対校クルーについての報告ならびに決意の程を述べてみたいと思います。今年も春のレースシーズンを迎えるにあたり、特に自らが全ての力を注いできた114回の引退が間近にせまってきたということに一際ならぬ感慨を覚える次第です。
関東選抜が終わってから我々は「将来を見据えた附属ボート部」としての強さを追い求めることを主眼においてやってきました。将来を見据えた上で附属ボート部には何が求められるのでしょうか。ボート部の選手個人は、二年間という短い期間にこのボート部で本当に濃密な時間を過ごします。その時間は本当に貴重なものですし、高校生にとって青春というにふさわしい価値を与えてくれます。今年の二年生においては、はやくから高度な漕ぎを追い求め、関東選抜においてそれを開花させることができました。
ここまできた時、後に残された期間で何をすべきなのかということを考えました。二年生を主体にさらなる強さを求めて精進することも選択肢のひとつであり、これは簡単なことです。現にやることはまだたくさんあります。しかし、それ以上に二年でここまでやることができた彼らの漕ぎを早いうちに一年生に刻み付けてやることこそ我々の成すべきことであると確信しました。
そう私に決意させたのは、「対校レース」の存在にあります。私たち附属ボート部は院戦、開成レースを最上の目標として日々練習に励む部活です。これは上位大会で好成績を修めようが変わることはありませんし、これからも伝統のレースでOBと強い連帯感を持てる部活であり続けてほしいと思っています。さてここ10年ほどの対校戦の結果を顧みて、附属は優勢をキープすることができていますが、これは上から下への附属イズムの伝達がスムーズに行われてきたからに他なりません。
所詮二年間でできることは限られています。しかし、上の代が積み重ねてきた技術の継承が二年間の可能性を極限まで広げてくれるのです。私はこの114回という恵まれた代を、ただ「強かった」代と後々に呼ばせたくはありません。その力が後輩の中で生き続けることこそ最高の栄誉であると思いますし、それは私がコーチになった理由でもあります。
そのような思考の末に出した結論が、対校クルーを二つ作るということでした。二人いる一年生をクォドルプルとダブルに分乗させて来年以降へと続く人材を作り上げること、そして対校レースにおける将来的な優位を確保することが狙いです。二年生のみのクルーも作ったのは、二年生にも引退のその日まで進化を求めているからです。本来ならば長い期間一つのクルーでシンクロさせていくべきこの時期においてこのやり方が正しいのかは今はまだわかりません。ですが、新しく入ってくる新入生がまっさらな状態から始めるのではなく、常にそれ以前の附属ボート部の土台の上に+αの二年間を経験できる体制を作ることが今後の附属に必要であると判断しました。
今の一年生が男子二人とやや少ない故、ボート部にとって今年は転機の年であるといえます。しかし少ないということは来年の新入生は早くから二年生と漕ぐ機会に恵まれてるともいえます。したがって新二年生の漕力を今の時点で最大限に高め、万全の体制でバトンタッチできればと思います。もちろん対校戦は勝たなければ意味がありません。それは十分に承知した上での結論です。もうじき合宿に入りますが、できることは全てやって対校戦ではOBの皆様に勝利の美酒に酔って頂けるよう頑張りますのでよろしくお願いします。